結論
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが1885年に発表した「忘却曲線」によれば、人間は学習から1日後に覚えた内容の約74%を忘れるとされています。ただし、適切なタイミングで復習を繰り返すことで、記憶の定着率を大きく改善できることも同研究で示されています。一般的に推奨される復習タイミングは「学習翌日・1週間後・1ヶ月後」の3段階で、この間隔で繰り返すことで復習に必要な時間が大幅に短縮されます。本記事の情報は2026年5月時点の学術情報に基づいており、個人の記憶特性によって効果には差があります。
本記事でわかること
- エビングハウスの忘却曲線の実験概要と具体的な忘却率のデータ
- 「節約率」という本来の測定指標の意味と、よくある誤解
- 科学的根拠のある復習スケジュールの組み方と実践ツール
1. エビングハウスの実験とは
ヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)は、1880年から1885年にかけて自分自身を被験者とした記憶実験を行い、その結果を1885年の著作『Über das Gedächtnis(記憶について)』にまとめました。実験には「無意味綴り(Nonsense Syllables)」と呼ばれる、意味を持たない子音・母音・子音の3文字組み合わせ(例:DAX、BUP、ZOLなど)が使われました。既存の知識や感情的な連想が記憶に影響しないよう、あえて意味のない素材を選んだ点が実験設計上の特徴です。
エビングハウスは一定のリストを完全に暗記した後、時間を置いて再び同じリストを覚え直し、「2回目の暗記に要した時間が最初の暗記と比べてどれだけ短縮されたか」を「節約率」として記録しました。たとえば最初に10分かかった暗記が、復習時には4分で済んだとすれば、節約率は60%ということになります。この「節約率の低下」を時間軸に沿ってグラフ化したものが「忘却曲線」です。
よく「1時間後に56%を忘れる」という表現が使われますが、これは節約率を忘却率に換算した解釈であり、「意識的に思い出せる情報量」とは異なる点に注意が必要です。エビングハウス自身の実験は無意味綴りを対象としており、意味のある文章や体験的な知識とは条件が異なります。この点はカオナビ人事用語集(参考文献参照)でも補足されています。
2. 忘却の速さと節約率のデータ
エビングハウスの実験から導かれた節約率の変化は次のとおりです。2026年5月時点で参照できる日本語・英語の複数文献において共通して引用されている数値です。
| 学習後の経過時間 | 節約率(記憶が残っている割合の目安) |
|---|---|
| 20分後 | 約58% |
| 1時間後 | 約44% |
| 1日後 | 約26% |
| 1週間後 | 約23% |
| 1ヶ月後 | 約21% |
つまり、学習直後は高かった節約率が、20分後には急落し、その後1週間〜1ヶ月をかけてゆるやかに低下する曲線を描きます。最も記憶が失われるのは最初の24時間以内であり、この時間帯に復習を行うことで節約率を大きく回復できることが示されています。
また、英語圏の複数の研究機関(Wikipedia「Forgetting curve」項など)でも「分散学習(Spaced Practice)は詰め込み学習(Massed Practice)に比べて記憶定着で10〜30%優れている」とする184件の研究をまとめたメタ分析の存在が紹介されています。エビングハウスの発見から140年以上が経過した現在でも、分散学習の有効性は広く支持されています。
3. 効率的な復習スケジュールの組み方
学習・教育分野の複数の情報源では、忘却曲線を踏まえた復習タイミングとして以下の3段階が一般的に推奨されています。
1つ目は学習した翌日(24時間以内)の復習です。最も記憶の低下が急な時間帯を乗り越えるための最重要ステップとされています。アルー株式会社のブログ(参考文献参照)では、この段階での10分程度の復習で記憶がほぼ100%近くに回復するという解説がされています。
2つ目は最初の復習から約1週間後です。この段階では5分程度の確認で記憶が回復するとされており、復習コストが大幅に下がります。
3つ目は2回目の復習から約1ヶ月後です。ここで再度確認することで、短期記憶から長期記憶への移行が促進されます。この段階に達すると2〜4分の確認で済むとされています。
この「間隔を徐々に広げながら繰り返す」アプローチはSRS(間隔反復システム:Spaced Repetition System)として体系化されており、Anki(オープンソースの暗記カードアプリ)やSuperMemoといったツールに実装されています。これらのアプリは、ユーザーが問題に正解するたびに次回の出題間隔を自動で延ばすアルゴリズムを採用しています。
なお、「1日後・1週間後・1ヶ月後」という間隔はあくまで目安であり、素材の難度・個人の記憶特性・学習量によって最適なタイミングは変わります。自分の正解率や手応えをもとに間隔を調整することが、より精度の高い復習につながります。
こんな人におすすめ
- 試験勉強で一夜漬けを繰り返しているが、本番前に記憶が抜けてしまうと感じている人には、長期的な分散学習スケジュールへの切り替えが合っている傾向があります。
- 外国語や資格の単語・用語を大量に暗記する必要がある人には、SRSアプリを活用した復習ルーティンの構築が効果的な場合があります。
- 職場でのスキルアップ研修後に内容を定着させたいビジネスパーソンには、研修翌日・1週間後に要点を見直す習慣を取り入れることが参考になるかもしれません。
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まとめ
- エビングハウスの忘却曲線は1885年の実験に基づくもので、人は学習から24時間以内に最も多くの内容を忘れることが示されている。
- 「節約率」という指標を用いた研究であり、「記憶量が○%消える」という単純な解釈には注意が必要。
- 翌日・1週間後・1ヶ月後の3段階で復習を行うことで、復習にかかる時間を短縮しながら記憶を長期定着させられる傾向がある。
出典
- カオナビ人事用語集「エビングハウスの忘却曲線とは?」 — https://www.kaonavi.jp/dictionary/ebbinghaus/
- Wikipedia「Forgetting curve」 — https://en.wikipedia.org/wiki/Forgetting_curve
- アルー株式会社ブログ「エビングハウスの忘却曲線とは?復習のタイミングや活用方法をわかりやすく解説」 — https://service.alue.co.jp/blog/forgetting-curve


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